一握りの人々よりも・・・ | ひとりごと | 心理カウンセラー 衛藤信之 | 日本メンタルヘルス協会

えとうのひとりごと


■一握りの人々よりも・・・
1999年10月12日
 先日、ある人から丁重なお手紙をいただいた。講演に感動したという感謝の言葉が綴られていた。ただいつもと違った内容は、私の講演会を開いた開催者が、ある宗教団体であるというウワサを耳にしたという忠告の手紙であった。ありがたいことである。
 講演で話した話が感動的な話であっただけに、先生のことが心配だというのだ。心優しき人からのお手紙である。私はすぐにも返事の手紙を書いた。

   夏から秋への移行期、人生について考えさせられるよい季節です。
  お手紙拝見致しました。応援そしてご忠告、心より感謝しております。
  ありがとうございます。
  私も以前より、その噂は聞いておりました。ただ、私は問題の渦中から
  逃げる生き方より、その中で変革する生き方を信じております。
   講演のなからも、お話ししたようにマインドコントロールの危険性を
  あえて警告しています。もしも、その話は控えてほしいという圧力がかけら
  れたり、私の大切な受講生に何らかの勧誘があれば、即刻、断固として
  主催者と戦う意志は持っているつもりです。
   今は、そのような事実はありませんから、その事実を見ず、噂で集団
  を判断する考えは、私の信条とはことなります。今、私が信じているのは受講
  された人々の真剣なまなざしなのです。こういう人々の瞳があるかぎり、
  私はどの団体に対しても分け隔てをせず伝えてまいりたいと考えております。

   でも、ありがとうございます。あなたさまのこころ優しき応援やご忠告には
  心より感謝しております。
  今後とも、ご指導いただければ幸いです。

                    心理カウンセラー
                           衛藤 信之

 多くの講演者は、その団体から手を引いているらしい。確かに講演者は人気商売である。「触らぬ神に祟りなし」この考えは時に正しい。物事は時間の推移にまかせたり、相手の気づきにゆだねるやり方も時には正しい。失恋して苦しんでいる人に、なぐさめはいらぬお節介になることもある。
 しかしながら「臭いものには蓋をしろ」的、生き方は問題を見て何もせずに逃げ出すようで好きにはなれない。私がこのような手紙を書いたのは、「○○先生も○○先生もお断りなっておられるようですよ」の一文に触発されてのことだった。みんなが避けているという言葉を聞くと、ハイそうですかとならない性格で、元来あまのじゃくなのかもしれない。、

 宗教というものは、分裂しやすく闘争好きなものだ。宗教は「救われた」者を「呪われた」者と分け、真の信者を異端者と分け、内輪集団をよそ者集団と分けることに依存しているわけだから、一種の抜け駆け主義である。宗教的自由主義ですら、「私たちはあなたがたよりも寛大だ」というゲームを演じている。 byアラン・ワッツ

 アメリカのスラム街は、黒人を嫌い、金持ちの白人から日当たりの良い地方へ引っ越して行き、残された街は、人々の心もすさみ、スラム化に拍車をかけたという。
 金持ちだけが核兵器の恐怖を避けて、シェルターに食べ物を詰め込んでいるという。予防策は確かに大切だけど、数人した救われないなら、救われる数人の中に強引に割り込み、少しづつくる死の恐怖と戦うよりは、核兵器は人類の愚かさと認め、救われない人とともに神に祈りたい。
 2000年問題も同じである。ただし、皆が気をつけて予防していれば、多くは救われることへの怠慢さは、個人や政府は責められるべきことでしょうが。
 最近の精神世界に傾倒している人の中にも、目覚めた人と未だ目覚めぬ人への優越感からくる、抜け駆け主義が見え隠れする。自分だけ救われて、他人のことをさげすむ考え方は好きではない。

 以前に、「完璧な人間でない自分がカウンセラーになり、人の前で心を説くことは自分にはできないような気がする」と言った、友人カウンセラーの嘆きに応えることは今だにできないが。

 立派に生きることが清僧なりと、自分を高みに置いて、人々に法を説かんとする兄弟子の養叟に対して、一休は、どうやら、わしの禅は赤提灯かお女郎屋向きらしいとあえて自分の評判もかえりみず、おのれを仏道の道から落とすことによって、民衆に法を説こうとしたことも、親鸞を慕いつつも、死にゆく我が身への執着という煩悩に苦しみ。その中に悟りを開かんとした蓮如も、5人の妻を持った人間臭い人であった。罪人に法を説いたイエスは天から世俗の人間の体を持って生きるという原罪の中に身をおいたのです。

 私もやはり、一握りの選ばれた人々よりも、救われようとして罪の中で、来るべき未来の可能性を信じる凡人でありたい。

   天国の中にいて 人は救えようか
     地獄の中に住まいて 地獄で迷う人こそ救うべき人なり
      私は地獄に住まいて  神を思う
                      by衛藤 信之

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