小さな天使たちへ | ひとりごと | 心理カウンセラー 衛藤信之 | 日本メンタルヘルス協会

えとうのひとりごと

■小さな天使たちへ
2003年7月8日



 最近、子供が犯罪に巻き込まれるケースがニュースに目立つ。同じ血の通った人間に殺される命の最後に、こころは何を思うのだろう・・・・
 それを考えるといたたまれない。テレビを見ていても、自分の目の中に恐ろしいほどの怒りと、目に見えない犯罪者への憎しみがわきでてくる。その身体をかけぬける自分の中の攻撃性と犯罪者の暴力は、やはり同じベクトルの延長線上にあるのだろうか・・・・だから、そんな時はみずからの怒りの捨て場所を探して心の中で決まって立ち往生する。

 そんな時は、温かくて小さな子供の身体を抱きしめたくなる。事件のニュースが流れるたびに、怒りに変えて、愛情を持って子供を抱きしめたくなる。子供に「こっちに来てくれないか」と・・・・人を信じるなと教えたくはないし、この世は悪い人が多いとも語りたくないから・・・・この心の悲しみが身体を通して子供達に伝わるように願って・・・・。
 
 たくさんの嫌なニュースが流れるたびに、誰かが誰かを抱きしめる必要がある。人は温かいのだと知ってほしいし、自分がもっともそれを感じたいから。言葉を使って仕事をしている僕が、いちばん言葉の頼りなさ、無力さに気づかされる時がある。そんな時はもうお手上げ、泣きたいようで、叫びたいようで・・・・

 人は、言葉や理屈で人とかかわるが、動物達は身体を寄せ合って眠る。

 人の温もりはダイレクトに相手が今生きている、生きたいのだ、というアピールになる。人生の中で、どれほど僕達は言語を越える“ふれあいの時”をもつのだろう。

 早く失われてゆく魂が、温かい優しい世界に戻ってゆくことを心から願ってやまない。

 そして、それは、この冷え切った人間世界が温かさに目覚める準備のための小さな天使の役目だったのだと。
 悲しい出来事を知った日は、小さな身体を抱きしめよう。悲しい事件のたびに、次の世代がやさしく生まれ変るように。

 生きものは自分の身体の温もりで新しい命を誕生させることは自然の法則だから。

 「神さまは、なぜこの世界をつくったの?」と聞く子供たちに、アラン・ワッツはこのように語る・・・・


 神さまはかくれんぼするのが好きなんだ。でも、神さまの他には何もないから、自分としか遊べない。それでも、神さまは自分が自分でないふりをすることで、この問題を解決している。

 それが、自分から隠れる神さまのやり方なんだ。

 神さまは君や私や世界のあらゆる人たちの、あらゆる動物やあらゆる植物、あらゆる岩、あらゆる星になったふりをする。そうやって、神さまは不思議なすばらしい冒険をする。ときには恐ろしいものや、ひどいものになったりすることもあるが、そういうのは悪い夢みたいなもので、神さまが目を覚ませば消えてしまうんだ。

 で、神さまが隠れる側になって君や私のふりをするときには、すごくうまくやるから、自分でどうやって隠れたのか思い出すのに時間がかかるんだ。
 私たちが変装して自分でないふりをしている神さまなんだということに気づくのが、君や私にとって、こんなにむずかしいのはそのためなんだよ。

 でも、この遊びがうんと長く続いたなら、やがて、私たちはみんな目を覚まして、もうふりをするのをやめるんだ。そう私たち全員が、ただ一つの存在なんだと思い出すんだ。そこにあるすべての物である神さま、いつまでも生きつづける、あの神さまなんだということを思い出すんだよ。

 どうして神さまは、ときどきこわーい人たちのかっこうで隠れたり、ひどい病気や痛みに苦しむ人たちのふりをしたりするんだろう、と君は訊ねるかもしれないね。実を言うと、彼はそういうことを自分にしているのであって、他の誰かにしているわけじゃないんだ、ということを覚えておきなさい。

 それから、君が楽しめるほとんど全部のお話には、良い人たちと同じくらい悪い人たちが出てこなくちゃいけない、ということも。
 それはね、物語のスリルというのは、良い人たちが、どうやって悪人をこらしめていくのかを見つけ出すことにあるからさ。

 トランプをする時も同じだ。ゲームをはじめるとき私たちは、カードを全部切ってバラバラにするよね、その一枚一枚は世の中の悪いことみたいなものだ。でも、ゲームで大切なのは、そのバラバラをシッカリとうまい順序に並べることで、それを一番うまくやった人が勝つんだ。
                      by アラン・ワッツ



 そして僕達はゲームで何が必要だったのかを、みんなで学ぶんだよ。

 すべての天使達へ。
        ありがとう。
            僕達はきっと学んでみせるから。







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