目に見えない仲間 | ひとりごと | 心理カウンセラー 衛藤信之 | 日本メンタルヘルス協会

えとうのひとりごと


■目に見えない仲間
2008年1月2日


※自宅より撮影

 年末から新年にかけてのこの時期、街はにぎやかで、とても華やいだ雰囲気に包まれます。そうすると落ち込み、さらに孤独を感じる人が多くなります。
 心のカウンセリングルームがにぎわうのも、この時期です。

 人というのは、人との比較で落ち込むものです。勝ち組や負け組みやKY(空気が読めない)も、「周囲の人と比べて」ということでは共通しています。

 日本人はそもそも周囲の視線を気にする国民です。昔から「和」を大切にする民族です。だから、いじめ問題も、いじめられた痛みより、誰も救ってくれなかった孤独が、こころの痛みになります。

 人は人に癒されて、また、人は人に傷つきます。人に傷つけられても、人は誰かを求めています。だから、社会が楽しそうに過ごしていると、自分だけが乗りきれない、取り残されているという孤独を感じるのです。それが絶望感を生み出します。

 孤独を感じる切っかけは、テレビの出演者の楽しそうな笑い声が聞こえた瞬間であったり、仲良く買い物しているカップルの笑い声を耳にした瞬間であったり、夜中、街のネオンの一つひとつに幸せの姿を感じた瞬間であったりするのかもしれません。

 でも、それは勘違いなのです。誰もが幸せであるわけではありません。だから、孤独と友達になることが大切です。孤独を嫌わないことです。自分だけが孤独だと思うことは、こころの傷をより深めます。

 僕は孤独と友達になることがうまい。人と出会う数が多いだけに、ひとりの時間も大切にしている。どうしようもない孤独とさびしさが、人と出会った時の感動をさらに高める。

 人は誰もが幸せに満ち足りてはいないし、満ち足りたと思ったら、その中にまた孤独やふとしたさびしさを発見するのが人間です。

 だから、生きることは孤独が基本なのだと知って生きていれば、孤独を感じない瞬間があれば、それはラッキーな事であり、幸せなことなのです。逆に孤独の時は、人生は孤独が基本だから苦しむ必要もないし、過剰に落ち込まないですみます。なぜならば、人生のスタンダードは、さびしさなのだから。

 カウンセリングをしていると、それを学ぶ・・・・人から見るとそんなことで落ち込みますか??と首をかしげたくなることでも、死にたいと思うほど落ち込む人がいる。
 また、よくそんな悲惨な経験をされているのに笑って生きてこれましたね、と頭がさがる人にも、たくさん出会います。

 悲しみは、出来事ではなく、出来事をどう見ているか、感じるかで、違ってきます。みんなが幸せで笑っているのに自分だけが悲しんでいる、という想いを強めて世界を見ると、落ち込みます。また、違う視点で、人は、それぞれにいろいろあるもの。「多くの人は、悲しくても苦しくても笑って生きているのだなぁ」とカウンセラーをしていると事実が分かる。そう思って世界を見ると、自分は普通なのだと思えます。

 幸せが基準だと思うか、悲しみが基準で、その中に時々笑えることがあればいいと思って生きるかで、幸せを感じる能力は違ってくるものです。

 多くの誰もが泣きたくなる夜があり、孤独におちいる瞬間がある。それを知ると、誰もがその孤独の中で生きているようです。

 僕は、人生は孤独でないとは言わない。人生は、時に孤独で、さびしいものです。
 それを当たり前と思うか、人生は幸せ続きであるべきと願い続けるかで、落ち込み方は違ってきます。

 うつの人は孤独だと言う。僕は孤独が当然だと思うから、そこから逃れたいとムキにならない。ムキにならないと、孤独に意識が向かわないから、孤独を顕微鏡で肥大化して見なくなるので気にならなくなる。うつの人は、孤独に神経をとぎすます。だから、孤独を顕微鏡で見てしまう。だから、孤独の化け物が落ち込みになる。

 僕の自宅からは、夜の街のネオンが見渡せる。僕は家族が寝静まったときに冷たい風をうけて、深呼吸をする。そうすると、多くの人が孤独の夜を過ごしているのを感じ、決して一人ではない連帯感を感じる。孤独の連帯感を。

 それは、インターネットで自殺仲間を探している逃げ腰の連帯感ではない。孤独の中で、その孤独と戦いながら朝が来るまで過ごしている、こころ強き同士、いや戦友の連帯感を感じるのです。

 仏教の世界ではこの世は修行場だそうです。キリスト教では僕たちは、罪の中で生きている受刑者だそうだ。

 ならば、ゴールするまで、歯を食いしばりながら戦ってやる。目に見えない戦友と一緒に、会うこともない仲間とともに・・・・・僕たちは目に見えない孤独という戦場で戦う仲間なのだから。

 眠れない時には、目に見えない仲間の呼吸を聴け!僕たちは決して究極の孤独ではないのだから・・・・・・






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