Giveの経済理論 | ひとりごと | 心理カウンセラー 衛藤信之 | 日本メンタルヘルス協会

えとうのひとりごと


■Giveの経済理論
2008年10月31日



 インドのガンジス河は遠くから見るとキレイですが、近くで見ると、汚れている。「どこが聖なる河ガンジスだ」とインドに行ったことがある人ならそんな感想を持ちます。でも、ヒンズー教では、流れているものは「清い」という考えが昔からあるようです。
 息も吸って、吐くから、生きているのだし。流れは止まるとニゴリます。経済もお金も、情報が流れるから、景気に活気があるのです。

 いい情報も流していると、いい情報が入ってくる。自分だけためていると、その人に情報は入ってこない。
 僕の教室でも、たくさんの友人を連れて来る人は、元気な人が多い。エネルギーがあるから友人が紹介で来るのか、いい情報を流しているから、友人が多いのか・・・どちらにしても良循環な人だと思います。

 インディアンは言います。与えるから、もらえると・・・・
     ギブ アンド テイクもギブ(与える)が先にくる。

 昔、大好きなお坊さんに、天国の話を聞いたことがあります。
 幼い僕に、「のぶ君、天国と地獄は同じようなところだ」と。
 天国も地獄もたくさんの料理が出る。ただ料理の横には、とても長い箸が置いてあるのだと。天国に来る人は、先に誰かに食べさせようとする。地獄に来る人は、自分だけで食べようとするから、長い箸で誰一人食べられない。でも、天上の人は誰もが与えあうから、誰もが満ち足りていると・・・・・

 恋人だったから、メールも送ったし、親切にもしたと言う女性がいた。今は別れたから、奴のために何もしたくないと言う。悲しい女性だった。また、過去に別れた女性が困っていても全然気になんかならないという男性もいる。愛情は、ここから、ここまでと、どこで線引きできるのだろう。愛情の海は、どこで色が変わるのか。

 昔、中国にインドからボーディダルマ(達磨さんのモデル)と呼ばれる偉い禅僧が来た。その時のはなし。武帝という皇帝が、「私は今までたくさんのお坊さんに親切にし、寺院をたくさん建ててきた。私にはどういう功徳(良いこと)がありますか」と尋ねました。

 ダルマは「無功徳(功徳などない)」と答えました。怒った皇帝は「なぜ功徳がないのか!」と叫ぶと、ダルマは応えて「あなたがしたくてしたのなら、私に『良いことした』言われなくても納得できるであろう。親切も、愛する心も、与えたことも同じだ、したくてしたならそれでよかろう。人に認めらなければしなかったのか」と言い、ダルマは、この皇帝にあきれ、その地方から去ってしまいました。

 でも、わたしたちは、武帝を笑えません。同じ愚かさや過ちを犯します。
 合格するから勉強する。誰かに、ほめられるからゴミを拾う。では、見ていなければ、ゴミは拾わないのか?となります。親切にされたから、相手にも親切にする。相手が愛してくれるから、私も愛する。子供に将来自分の老後を看てもらいたいから、子育てする。

 どれも、これも見返りです。「子供の時に、見返りの期待で育てられた人は、見返りの愛情に執着する」心理学者カレン・ホ−ナイは言いました。

 見返りがあるから、愛情深くかかわる。見返りがないなら愛さない。
     そのような「愛情心は怪しいものよ」と達磨は、カーッ!と喝破して笑います。

 この社会も同じかもしれません。与えるから、幸せになれる。その人からではなくても・・・・
  幸せは、おおらかな人の心にノックする。
  もらおう、もらおうとする人は、幸福のエネルギーが、その人から消えていきます。

 地獄に住んでいる我鬼には、三種類いるそうです。裸でいる我鬼が『無財我鬼』、少し布をまとって地獄で大鬼の周りで走り回っている我鬼が『少財我鬼』だそうです。
 そして、驚くことに『多財我鬼』がいるそうです。お金をたくさん持った我鬼で、裕福な鬼です。ただ、この多財我鬼は地獄にではなく、人間社会にいるそうです。

 この鬼は、毎日、平和に暮らし、毎日、食べて暮らしているのに、まだ、足らない、まだ、足らないと、血眼になって、お金のために、蓄財のために、走り回っている人間界に住んでいる鬼だそうです。

 カウンセリングの現場にいると愛を求める人ほど、愛に恵まれず、何も求めず笑っている人に、幸運が巡ってくる。今まで僕はたくさんの人と出逢ってきましたが、やはり“幸せの方程式”というものがあるようです。それは、あたえている人が、たくさんの援助を手に入れているということです。

 今、新聞を見ると、下降修正、景気の低迷、企業の倒産、リストラ、経済の後退、実質経済不安、円高不況、株の下落など枚挙いとまがない状態。

 不景気は英語でDepressionといいます。うつ病も英語でDepressionといいます。「不景気」と「うつ病」は英語の世界では同じ単語を使います。不景気とは、西欧では、国がうつ病になることです。

 今、日本人のうつ病の患者数は推定700万人以上いると言われています。1996年は43万人、1999年は44万人でした。確実にうつ病患者は急激に増えています。

 うつ病の特徴は、メランコリ−親和型と言って几帳面で、心配症で堅実です。
 だから、お金をため込む。

 日本人の個人の貯蓄は1400兆円です。世界のどの国よりもお金持ちの国です。外貨準備高もダントツです。そして、世界一の債権国で・・・そう世界で一番、世界中にお金を貸している国、黄金の国ジパング。でも、それは流れていないお金です。沈澱している泥のように・・・・

 問題は「不景気とは」お金が流れないこと。流れないから、商品が売れない、お店に人が来ない。だから、商品が売れないから、会社は商品をつくれない。つくらないから新しい機械を導入しない、設備投資しない。だから、商品や機械が売れない。売れないから会社が倒産する。当然、社員はいらなくなる。倒産や、リストラが増加する。

 そこで近所の人や、知り合いの失業、倒産で不景気感が強まる。すると将来の不安を感じて、お金をまた貯めこもうとする。そうすると貯蓄率だけがあがり、商品やサービスにお金を落とさなくなり経済が冷え込む。だから、また会社がつぶれる。不景気のウワサが流れる、また、財布のひもが固くなり、使わなくなり、また将来の不安を考えて貯めようとする。また、消費が冷え込む・・・自分の幸せを考えて、アリ地獄に堕ちてゆく、不幸な日本人。

 今の不景気は、集団不安心理に病いに原因があるようです。だから、麻生総理が2兆円をばらまくと公言しても、この不安な心理構造を変えないと、それは景気の刺激にはならずに、ばらまかれた2兆円は、1400兆円の個人貯蓄に回されるだけです。使わない貨幣は、何も生み出さないから、日本の貨幣価値は下がり、国は滅びる。

 この悪循環のスパイラルから抜け出せなければ、日本の景気はますます冷え込むことでしょう。そしてまた、うつ病はさらに蔓延する。このギブよりテイク病の爆発的感染(パンデミック)は、与えることより、ストックしようとする「人の心」が、感染経路なのです。

 今、日本も世界も、与えること、譲ること、愛すること、あけわたすことが大切な時代になっています。蓄えようとすると、国がメタボになります。汗をかき、息を吐き、たくさん与える。

 多くの人が、河の流れのように、愛を、心を、優しさを流すことが大切な時代なのでしょう。
    蓄えた人が勝つ時代ではなく、与えた人が勝つ時代に・・・
       長い箸の原理で、みんなが、心も、情報も、お金を流しましょう。
         そう、だから明日は、欲しい服を買いに行こう!ってか。










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